介護ロボット等モニター調査事業

公益財団法人テクノエイド協会が実施した厚生労働省の令和2年度「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」「介護ロボット等モニター調査事業」に採択され、特別養護老人ホーム飛鳥晴山苑さまにて実証調査を行いました。

福祉用具・介護ロボット実用化支援事業(令和2年度)

PDF「福祉用具・介護ロボットの 開発と普及2020」

●実施結果

モニター機器 Mサイズ 2枚 Lサイズ 2枚 で調査実施

1. 利用対象者の適用範囲に関すること

年齢:80歳代2名 90歳以上2名
身長:140~147cm 体重:33~61kg

(1)自立用利用か介護用利用かの確認
・・・ モニター機器4枚とも介護用利用であった
(2)姿勢保持(身体機能)レベルの確認 座位能力について調査

・・・ 保持できる方1名、自分の手で保持1名、他人の手で保持2名

介助する方(評価者) 施設正職員 4名

年齢:40歳代以下2名 50歳代2名
身長:162~175cm 体重:50~65kg
ボード利用経験:よく使っている1名 たまに使っている3名

利用環境の条件に関すること

(1)利用環境の写真(上2枚Mサイズ 下2枚Lサイズ)

 

 

(2)車いすおよびベッドのメーカと型番の確認

車いすは日進(NAH446T)、カワムラ(KA816、KA822)、松永(REM-1000)
ベッドは4台ともパラマウントベッドKR-813

(3)従来より使用の他社ボード

パラマウントベッド イージーグライド SS、S、M で使用頻度日に4~5回

3.機器の利用効果に関すること

従来型と「つばさ」型の利用効果の比較を、
 ・従来型が大いに優れている場合は -2点
 ・少し優れている場合は -1点
 ・同じくらいの場合は 0点
 ・「つばさ」が少し優れている場合は 1点
 ・大いに優れている場合は 2点
で評価いただいた結果

①自立利用・介助される方のADL( 日常生活動作 ) 平均:-0.5点
②自立利用・介助される方のQOL( 生活の質 )       平均:0.25点
③介助する方(看護従事者)の負担軽減状況   平均:0.75点

4.機器の使い勝手に関すること

従来型と「つばさ」型の使い勝手の比較を、
 ・従来型が大いに優れている場合は -2点
 ・少し優れている場合は -1点
 ・同じくらいの場合は 0点
 ・「つばさ」が少し優れている場合は 1点
 ・大いに優れている場合は 2点
で評価いただいた結果

①抜き差しのし易さ       平均:0.5点
②持ち易さ           平均:1.0点
③セッティングのし易さ     平均:0.5点
④滑らせ易さ          平均:0.25点
⑤機器の安定感         平均:0.75点

 

5.介護現場での利用の継続性に関すること

①説明書の記載内容について
②使い方動画について
③ボードの耐熱強化(車への移乗利用の必要条件)の必要性について
④ガイドシールの耐久性強化(彫り込み)の必要性について
⑤タイヤの干渉対策(タイヤカバー)の必要性について

確認したところ、
「特に問題なし」「不要に思う」の意見が多かったが、ボードの耐熱強化やガイドシールの耐久性強化を求める意見もあった。

⑥利用継続の意向について

は、評価者4名のうち、継続的に利用したいが3名 従来型で十分が1名であった。
調査時に撮影いただいた動画等より、移乗時のお尻(座骨)の動線と移乗時にタイヤ等への干渉が無かったかを機器開発者および使い方の指導担当に調査・分析いただき以下の 考察をいただいた。

 

(評価について)

今回、ボードを「よく使っている」評価者Cを除く3名に、部分的に想定とは異なる使用方法が見られた。その結果、使い方によって評価が変わってしまう可能性がすでに導入している施設のノーリフティングケアの専門家より示唆された。

・ベッドと 車椅子の高さが違う場合、移動後のボードのすべり止めの効果が低下し、ボードが不安定な評価に繋がりやすい可能性がある。(傾きにより、勢いがつきすぎている様子も見られた)
・立位での介助では、対象となる方の前屈が誘導しにくいため、ボードが差し込みにくいという評価に繋がりやすい可能性がある。

認識のズレを解消すべく、今後の使い方の説明などに役立てていきたい。

評価者Cは「つばさ」に対する使いやすさの評価は高い一方で、従来型の比較対象で十分という回答であった。ボードを「よく使っている」者であり、道具の善し悪しなど問題にしない技術があると解釈している。逆に「つばさ」を継続利用したいと回答した3名は、ボードは「たまに使っている」者であるという興味深い結果となった。 「つばさ」 はこれからボードをよく使って行こうという、ノーリフティングケアの導入時期に魅力ある製品であることが期待でき、全体としてのケアの質の向上へと繋がるきっかけとなる可能性や社会的価値を秘めていると思われる。ノーリフティングケアの導入時期であり「つばさ」を使ってみたい方や、丁寧で適切な使い方の指導に協力いただけるパートナーを求めている。

 

(骨盤の後傾とより適切な配置について)

移乗時の干渉物から離れて安全に安定して滑るために、使用環境や使い方の理解に応じた位置ガイドの目印としての活用を推奨している。関連して今回、予備的に移乗時の骨盤の後傾と、座位殿・転子距離を調査した。その結果、共通して使用対象者の骨盤は後傾した状態での移乗動作であり、その姿勢での座位殿・転子距離は9.5~11cmであった。今回の知見から、ボードの位置関係を整理すべく、支持部と軌跡を仮定し配置を逆算した。条件は以下とした。

・移乗時の座位殿・転子距離は11cm
・骨盤は45度後傾した高齢者
・「ベッド」から「車いす」へ移乗介助につばさLサイズを用いる
・安全のために、ブレーキレバーと臀部後縁間に6cmのスペースを設ける

条件より、ブレーキレバーを中心に17cm離れた位置へ転子点を誘導すれば、干渉することはない。想定の軌跡の条件として、つばさ形状の中間である中央ライン付近でかつ、支持部が前方へ超えないこととした。なお、想定軌跡の真下付近に背面の滑り止めを配置している設計である。骨盤の骨格モデルから、45度後傾時の、臀部後縁と仙骨と坐骨の距離のおよその比率を求め、坐骨から仙骨の間を支持部とした。以上から位置関係をまとめると、図のようになる。適切に配置することで、骨盤が後傾している想定でも、干渉物との間に6cmの安全のためのスペースがある。この考え方の妥当性は引き続き調査し、より適切な使い方のためのチェックリストとしたい。

 

●市場投入に向けて有用となった事項

車いすとベッド間の移乗介助において、モニター調査機器「せき損式スライディングボード「つばさ」」は、「抜き差しのし易さ」「持ち易さ」「セッティングのし易さ」などの使い勝手や「介助される方のQOL」や「介助する方の負担軽減」などの利用効果において、従来型機器よりも優位にあることが分かり、また、作成済みの説明書や使い方動画などにおいても「特に問題なし」であることから、市場投入に向けても有用であると考える。
当機器は昨年5月より販売を開始し、既に80枚ほどの販売実績をあげ、介助する方(事業所)から使い易いとリピートもいただいている。

また、モニター調査実施機関より、対象の利用者は(認知症等により)自ら不安感等の感情を訴える事が出来ない方ばかりであったが、ボード(「つばさ」)を使用してからは移乗動作時の筋緊張(特に両脇)が緩和されている様子が伺えた、との評価をいただき、「つばさ」使用を始めるにあたっても、HPの使用法動画を見てから実践に臨んだので、皆が同じ手順・作業を行う事ができ、ケアの統一が図りやすかった、又経験・スキルの無い新人職員も統一した教え方が出来たので、混乱することなく使いこなせた、などの考察をいただいた。

© 2021 スライディングボード「つばさ」